トヨタに激震!? 販社統合で車種半減 今後のクルマはどうなる??

 トヨタのクルマがいま大きく変わろうとしている。

 2019年4月1日から、いよいよ東京ではトヨタの販売会社が統合され、全店でトヨタの全車種が買えるようになった。

 折しもマークII時代から半世紀以上に渡る歴史を持つマークXの消滅も発表されたが、トヨタのクルマは今後どうなるのか? 販売店統合の動きは、トヨタが今後車種ラインナップを半減させることとも大きく関係している。

文:渡辺陽一郎/写真:編集部、TOYOTA
Boosterpackdepot 2019年5月10日号

東京は統合開始! トヨタの販売店実態に大幅変化

4系列ある販売店のひとつ「カローラ店」。このほかトヨタ店・トヨペット店・ネッツ店と、各販売店がそれぞれの専売車種を持ち、差別化されてきたという歴史がある

 トヨタのディーラーは、トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店の4系列だが、東京地区は2019年4月1日に「トヨタモビリティ東京」として統合された。看板も変わり、東京地区の店舗は共通の外観になり、全店で全車が扱われる。

 統合された販売会社は、東京トヨタ/東京トヨペット/トヨタ東京カローラ/ネッツトヨタ東京と、この4社の持株会社になるトヨタ東京販売ホールディングスだ。

 このなかには「東京トヨタ」のように地場の販売会社として発足したケースもあるが、後にすべて直営化された。

 トヨタが100%出資する完全子会社に「トヨタ東京販売ホールディングス」があり、さらにその完全子会社に前述の販売4社が位置する。これらをトヨタの完全子会社となる「トヨタモビリティ東京」に統合した。

 もともとトヨタの直営だった会社の統合だから、資本関係に本質的な変化はない。しかし4系列を廃止してトヨタモビリティ東京に統合すると同じ店舗ばかりになり、販売店の実態は大幅に変わる。

 この背景には、トヨタが2018年11月に発表した国内販売網の変革がある。2022〜2025年に、国内ディーラーの全店が全車を扱う体制へ移行するという。

マークXも消滅決定! 車種半減で姉妹車は廃止へ

これまでヴェルファイアはネッツ店、アルファードはトヨペット店の専売車種だったが、こうした姉妹車は整理され、今後統合が進んでゆく

 これに伴って車種数も30車程度に半減させる。全店が全車を売るなら、アルファード&ヴェルファイア、ヴォクシー/ノア/エスクァイアといった姉妹車は不要だ。

 設計の古いマークXなども廃止すれば、30車種程度に収まる(編注:マークXは2019年12月の生産終了が正式発表された)。

 ちなみにトヨタの販売系列は、1950年〜1980年頃に車種が増加したことで拡大してきた。姉妹車はあるものの、販売系列ごとに取り扱い車種を専門化して、入念な顧客サービスにより着実に販売していた。

 この膨大な手間と時間を費やして築いた販売系列を、東京地区のみとはいえ廃止する理由は、販売会社の合理化と多角化だ。

 合理化は、姉妹車の開発を減らすだけでもメーカーの負担が軽くなる。ある開発者は「販売系列の都合で、外観の違うクルマを作り分けるのは、手間とコストがかかる」と言った。

 また、東京の販売店が統合されると、必然的に店舗の廃止も生じる。例えばトヨペット店とカローラ店が並ぶ場所などは、どちらか一方は不要になって合理化を図れる。

 多角化は、カーシェアリング、トヨタ車を定額制で利用する「KINTO」などの新しいサービスの導入だ。販売店の統廃合を進め、余剰になった店舗も利用して、これらのサービスを展開する。

 系列の廃止に際し、メーカーは「全店で全車を売ればお客様にとって便利」と述べることも多いが矛盾を伴う。過去の販売系列の否定になるからだ。

 数多く売るには販売系列が不可欠だから、廃止は販売規模の縮小を意味する。姉妹車の廃止も同様で、ユーザーは車種を選ぶ自由を失う。

販社統合で全店全車販売へ! 現場の声は?

これまでトヨタ店を中心に販売されていたクラウンも、今後は全チャネルで販売される。現場の販売店にそれはどう影響する?

 2019年3月下旬、都内販売店で今後の予定や見通しを尋ねた。

「改装は順次行うが、未経験の試みだから、今後の見通しが立たない。全店が全車を扱えば、ネッツ店は新たにクラウンを売り、トヨタ店にはパッソなどが加わる。従来以上に多くの商品知識が求められる。カタログも大量になる。

 現状では点検などの工賃が系列ごとに異なり、新たに決めることも多い。ひとつの会社にするなら、金額も統一すべきだろう。残価設定ローンの残価率も系列ごとに違う。

 そして、店舗の統合や廃止が進むと、新しいカーシェアリング事業などに乗り出しても、リストラは避けられないと思う。

 その一方で店舗を単純に減らすと、サービス工場の規模も減り、車検などでお客様の車両を預かる期間が長引く。ショールームは減らせても、サービス工場は縮小しにくい。

 そこで、複数の店舗をひとつの大型店舗にする方法もあるが、土地が必要なうえ、店舗の建設にも時間を要する」と言う。

 販売会社の経営統合は可能でも、販売系列をひとつに絞るのは難しい。

 また、東京以外はメーカーに頼らない地場資本の販売会社が多いから、1社に合併するのは困難だ。

 それでも2022〜2025年には、全店が全車を扱う。そうなれば販売力の強い販売会社が生き残り、ほかは吸収されていく。

 この将来的な動向は、かつて系列化されていた他メーカーを見ると予想できる。日産は2003年に約3100店舗を構えたが、今は2100店舗だ。ホンダも2400店舗から2200店舗に減った。

 今後のトヨタの販売会社は各地域での競争が激しくなり、販売力の強い会社が生き残る。そのような地場資本は、トヨタの販売会社以外にも量販店など複数の事業を営むことが多く、カーシェアリングなどの試みにも柔軟に対応できる。

 トヨタは生き残った確実に利益を上げられる強い地場資本と組むのだろう。今後のトヨタが求めるのは、販売会社の経営者ではなく、事業を幅広くダイナミックに展開できる資本家になる。

値引き競争も困難に? ユーザーメリットはあるのか

C-HRのほかプリウスやアクア、シエンタなども全店舗で販売されているが、こうした車種が増えることでユーザーメリットはあるのか?

 問題はユーザーのメリットだ。新しい事業やサービスは楽しみだが、全店が全車を扱えば、東京に限らず店舗の削減が進む。不便を感じて、車種が減るのも寂しい。

 東京のようにひとつの販売会社になると、購入時の値引き競争も難しい。

 あるセールスマンは「今のトヨタでは、プリウスやC-HRのように、全店が扱う車種が増えた。そうなるとお客様は、異なる販売系列同士で値引きなどを競わせる。社内的には、トヨタ同士の値引き合戦を防ぐことも、統合の目的に含まれると思う」とコメントした。

 カーシェアリングは、希望するユーザーに提供することは大切だが、積極的に推進すると車が公共の交通機関に近づく。

 友達同士で1台の車をシェアするなら別だが、今のカーシェアリングは短時間でも使えるレンタカーと同じだ。知らない人が使うから、ルールを守っても「愛車」にはなり得ない。

 ユーザーの「所有したい欲求」を満たすことも大切だ。洗車からドレスアップまで、クルマを巡る楽しさは所有から始まる。

 顔見知りのセールスマンが入念なサービスを行い、車検も1日で終えるなど、今のトヨタ系ディーラーの顧客満足度はとても高い。

 時代の変化に対応することは大切だが、昭和から続くトヨタディーラーのよさもある。少なくとも車検や整備など、安心と安全に関しては高い水準を維持してほしい。

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