もっと安くできる!? 車を買ったら必ず入る自賠責保険 5つの疑問

 クルマはもちろん、原付自転車などバイクを買った場合でも、必ず加入しなくてはならない自賠責保険。自動車や二輪車ユーザーが払ったその保険料の一部が「貸し出され」、しかも未返済ってどういうこと? 昨今話題の運用益問題、仮に運用益が返済されたなら「その分保険料を安くできないのか!!」という怒りにも似た疑問も湧く。そこで、自動車ジャーナリストで保険募集人の資格を持つ西村直人氏が、5つの疑問を解説。自賠責保険料はなぜ年々変わる?

文:西村直人/写真:編集部


自賠責保険料は人身事故件数で変わる! 

Q1/年々変わる自賠責保険料率はどう決まる? なぜ、値上がりする年がある?

【図】自賠責保険料の推移。2018年度も2017年度の保険料率を維持することが決まっている
【図】自賠責保険料の推移。2018年度も2017年度の保険料率を維持することが決まっている

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 自賠責保険料率は、その目安となる「自賠責保険の基準料率」を毎年検証することで公平に判断され、必要であれば改定によって保険料率が変更されています。

 確かに、その保険料率には変動(最高引き上げ率2.5倍頭打ち/1969年)がありますが、だからといっていきなり保険料が10倍に値上がりすることは現実的に考えられません。

保険料率は次の2つの項目で構成されています。

1.事故が発生したときに保険会社が支払う保険金に充当する「純保険料率」
2.保険会社が保険事業を行うために必要な経費に充当する「付加保険料率」

 この1と2はそれぞれ損害保険料算出機構によって「自賠責保険の基準料率」として算出されていています。

 そもそも自賠責保険とは、交通事故によって加害者が被害者を死傷させてしまった場合に、加害者の支払い能力によらず、被害者に対して一定の保険金を支払うための保険です。

 また、道路を走行する乗り物で相応に分け合って保険料を負担すべしとの概念(リスク対応型の料率区分)から、原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務付けられています。この義務化という部分をとらえ一般的には「強制保険」とも言われています。

 よって自賠責保険は事故の発生リスクによって変動する料率区分であることから、保険料率の改定によってのみ保険料は変動します。

 つまり、クルマの使用目的や種類によっても事故被害のリスクが異なることから、用途や車種ごとに区分が設けられ、それぞれに保険料が異なっています。

 また、人身事故が増えればそれだけ保険金の支払い額が増え、逆にその数が減少すれば支払い額も減るため、改定によって値上げや値下げされる年が混在しているのです。

運用益は保険料を運用して得た「利息」

Q2/今、話題になっている運用益とは?

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 「運用益」とは、これまで自賠責保険で累積されてきた資金を元本とするお金です。具体的には、人身による交通事故の発生タイミングは、加入者から集めた保険料の収入時期と異なります。

 よって、被害者に支払われる保険金の支払い時期とは時差が生じます。そのため保険会社には一定の資金が残るわけですが、この手元にある一時的な資金を運用して得られた利息分を「運用益」と言います。

 この運用益は、利潤(黒字)や損失(赤字)が生じないように算出する「ノーロス・ノープロフィットの原則」に則って充当されていて、交通事故等によって脊髄損傷を負った方が社会へ復帰するための「ピアサポート活動」や、重篤な患者を搬送するためのドクターヘリに関する知識を得る「ドクターヘリ講習会」の開催支援、さらには高次脳機能障害を負った方やその家族の社会復帰を目的とした「集団治療プログラム/オレンジクラブ」の支援などに使われています。

運用益の返済期限は間近!!

Q3/なぜ今、運用益問題が表面化?

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 事の発端は1994年度と1995年度に、旧大蔵省(現財務省)に対して旧運輸省(現国土交通省)が、特別会計から貸し付けた運用益(1兆2000億円)の存在です。

2015年度までに6921億円が返済されたものの、残りは利子相当額を含めて6169億円がそのままになっていることから問題視されています。返済が滞っている理由として財務省は「景気の低迷」を挙げています。

 今、それが表面化したのは財務省と国土交通省の間で交わした返済期限(過去に3度設けられていたがいずれも延期され今回が4度目の期限)が2018年度に設定されているからです。

全額返還で保険料値下げは可能?

Q4/未返済の運用益6169億円はかなりの大金。全額返還されたら、自賠責保険料を値下げすべきでは?

車検証とセットでダッシュボードに入れることが多い自賠責保険の証書
車検証とセットでダッシュボードに入れることが多い自賠責保険の証書。長期契約のほうが割安になる

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 6169億円は大金ですから、全額返済されることで自賠責保険の保険料が下げられるという見方もあるでしょう。

 しかし、現時点で自賠責保険の運用益は前述の、社会貢献活動以外にもたくさん使われています。また、こうした活動は日本損害保険協会による「自賠責保険運用益活用事業」として行われていて、交通事故の発生件数そのものも高止まりになっていることや超高齢社会がさらに進むことから、今後もその存在意義は大きくなっていくと言われています。

今後、保険料の値上げはあり得る?

Q5/保険料の値下げが難しいとしても、運用益問題が一段落したら、しれっと値上げすることは言語道断。あまり国は信用できないので、「しれっと値上げ」もあり得るのでは?

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 そうですね。そういった見方も十分に考えられます。しかし、運用益の問題が“一段落”というのは正しい場所に資金が戻るということです。

 よって、その時点での運用益による支援先が確固たるものであり、国民に対し広く救済することを目的としたものであれば、支援の手を緩める必要はないのではないでしょうか?

 もっとも保険料の値上げは、主たる人身事故の発生件数を下げていくことと同時に、日本において約8100万台に及ぶ車両をどれだけ事故から遠ざける運転環境を国として提供できるかに掛かっています。

 よって、乗り物に乗る一人ひとりが些細なことでも良いので、国に対して望まれる交通インフラの形を提案(カーブミラーの設置や道路標示の見直しなど身近な要求)するなど、値上げを極力避けるための交通環境(=事故のない社会)を整えていく相互扶助の精神が大切であると考えています。

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