クルーズコントロールはなぜ115km/hに設定できるのか?

 クルマにまつわるさまざまな不思議を追う本企画。今回の宇宙人さまの疑問は「クルーズコントロールはなぜ115km/hに設定できるのか?」だ。というのも、日本の高速道路の法定速度は100km/hなわけですよ。しかしながら多くの国産車のクルーズコントロールは115km/hに設定できたりもする。この法定速度+15km/hはなぜOKされているのか、さっそく国土交通省に取材してみた。
初出:Boosterpackdepot2015年11月10日号


上限115km/hの設定は、法律で決まっているわけではなかった

 国土交通省で応対してくれたのが自動車局技術政策課。さっそくクルーズコントロールの設定最高速度について質問をしてみた。

「クルーズコントロールの最高設定速度ですか? それは国土交通省が決めているものではありません。我々は『技術指針』というものを作り、クルーズコントロールなどを含む安全につながる技術に関して、自動車会社にこの点に注意して作ってくださいね、という指針を決めています。

 例えば【運転席にクルーズコントロールの設定速度が表示されるのが望ましい】など、安全に装置を開発するための指針です。そこに法的な拘束力はありません」。

 むむっ、クルーズコントロールの最高速度は国土交通省が決めていないことが判明したぞ。ついでなので、設定可能速度が法定速度以上になっている件についても聞いてみた。

「それは警察さんの決めることですが、一般論でいえば法定速度を超えて走行することは許されません。繰り返しになりますが国土交通省がクルーズコントロールの設定速度を115km/hにしなさいと決めたりしていることはありません。そこは誤解なきようお願いします」。

 国土交通省の回答としては以上のようなものだった。法的に「クルーズコントロールの設定速度は115km/h以下にすべし」と決まっているわけではなさそうだ。

 だがこれでは、宇宙人の疑問への回答になっていないので自動車評論家の西村直人氏に話を聞いてみた。

「それは非常に答えを出すのが難しいというか、答えのないようなものと言いますか……。クルーズコントロールの設定速度にはちょっとしたカラクリがあるのです」。

 そのカラクリを西村氏にサクッと説明してもらいました。

「スピードメーターの誤差って聞いたことありますよね? 実測とメーターの数値に誤差が生じるということです。実はその誤差を反映して実測時に100km/hが出るように、クルーズコントロールの設定速度が100km/h以上になっているだけです」。

誤差を求めると答えが見えてくる

 車検場などでよく聞く言葉に「実測値とメーター値の誤差」というものがある。スピードメーターの示すスピードが、実際のクルマの速度(実測値)の基準値以上の誤差があってはならないというもの。法的な根拠を求めていると国土交通省の資料を見つけることができた。 

 それが『道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(速度計等)』というもの。保安基準に適合するためにはこのルールに従ってねというものだ。とても親切。

 平成18年までに製作されたクルマの場合は、【10(V1-6)/11≦V2≦(100/90)V1】(公式1)に当てはめる。平成19年以降に製作されたクルマは【10(V1-6)/11≦V2≦(100/94)V1】(公式2)に当てはめる。V1がクルマのスピードメーターが指す速度、V2が速度計試験機を用いて計測した速度(実測値)。

 本来は時速40km/h時に用いる公式なのだが、今回は試しに100km/h時の誤差を求めてみた。平成18年以前のパターンは【10×(100-6)÷11≦V2≦(100/90)×100】となる。するとスピードメーターの許容範囲は85.45km/h≦111.11km/hとなる。

 同様に平成19年以降の基準で計算すると、実測100km/h時のスピードメーターの表示は85.45km/h≦106.38km/hの範囲になくてはならないわけだ。

上限115km/hの設定速度の根拠はどこに!?

 実測値とスピードメーターの数値の誤差はこの範囲内で認められていることがわかった。しかし115km/hというクルーズコントロールの最高設定速度はどこから来たのだろうか。さっそく115km/hを公式2に当てはめてみよう。

【10×(115-6)÷11≦V2≦(100÷94)×115】になる。つまり99.09km/h≦122.34km/hまでが許容されるメーター誤差となる。誤差の範囲の最低速度が約99km/h、つまり法定速度100km/hを下回っている!! メーター誤差が生まれる可能性を最大限考慮すると、クルーズコントロールの設定速度は115km/hでもいいということのようだ。

 ちょうど疑問を解決し終わったところでトヨタのクラウンのクルーズコントロールが発表された。最新の車車間通信を行うモデルだ。イラストにあるように、前方のクルマの加減速情報を感知して自車の速度を自動で調整する。今まではレーダーのみで行っていたことを通信も併用して行う優れもの。まるで前車と連結したような追従走行が可能という。

現在主流の追従式レーダー式クルーズコントロールの概略図(トヨタ)。快適性のみならず安全性に大きく貢献

 前出の西村氏に今後のクルーズコントロールについて聞いてみた。

「トヨタが新たに出した車車間通信などの技術が将来自動運転にも応用されると思いますし、自動運転のクルーズコントロールは周りの偏差に合わせたものになるでしょうね。簡単に言うと『周りの流れに乗る』といった感覚でしょうか」。

 今後はクルーズコントロールの最高設定速度と共に、機能の進化も期待したい。

 今回の「不思議」の結論をまとめてみると、「スピードメーターの示す数値と実測値の誤差を最大限考慮すると、クルーズコントロールを115km/hに設定した場合に99km/hしか出ないことも考えられるから」といえそうだ。

トヨタの車車間通信式クルーズコントロール。従来のレーダー式にプラスして通信を行うことでよりスムーズな加減速を行うことができる。まさに未来のクルーズコントロールである
先行車を検知すると速度を調整して追従することが可能

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