大型トラックの自動運転時代がすぐそこまでやってきた!

クルマに装着されるミリ波レーダー、ステレオカメラなどによるセンシングだけでなく、

車々間通信やLAN技術など、あらゆる情報通信を使い、自律自動走行が行われる。

結果として、安全性の向上はもとより、燃費の改善、高齢化するドライバーの劇的な疲労軽減など、

これからの自動車社会を大きく変える時代がそこまできている


ドイツ国内から250人以上、世界各国から50人規模の報道陣が集まった。

 7月3日、ドイツ・ベルリン近郊のマグデブルクで、ダイムラーによる「フューチャートラック2025」と名付けられた世界初の大型自動運転トラックのデモ走行が公開された。

当日はダイムラー商用車の総責任者であるウォルフガング・ベルンハルト取締役をはじめ、ザクセン・アンハルト州の交通大臣、開発陣、学識経験者など多数出席、世界中から集まった約300名のプレスの前で記者会見と実際に大型トラックの自動運転がどのようなものかが紹介された。

日本からは私、本誌・宇井と2輪から大型トラックまで精通する若手の交通評論家、西村直人氏が現地で確認したので、この大型トラックの自動運転が、今後、どのように自動車社会を変えるのか、あるいは日本のクルマ社会にどんな影響を与えるのか、説明していこう。

「2025年はもうすぐそこ」

 宇井 今や世界中の自動車メーカーが自動運転に取り組んでいて、乗用車では危険回避を含め相当進んでいる感じですが、トラックでは今回が世界初といっているようです。トラックの自動運転というのはそんなに難しいものなんでしょうか?

西村 自律自動運転技術そのものは、乗用車の世界ではすでに部分的とはいえ実用化されています。メルセデス・ベンツでいえば、「S500インテリジェントドライブ」と称して、約100㎞/hに及ぶ自律自動運転の実証実験を昨年、ドイツの公道で成功させています。

しかし、乗用車と商用車、とりわけ今回のようなGVW(車両重量+積荷+乗員)で40t近い大型トレーラーともなると乗用車と同じ技術だけでは制御が間に合わないことがあります。

たとえば、加減速の制御にしても、積荷の重さによってアクセルの踏み込み量やブレーキの掛け具合が大きく変わってきます。また、路面が上り勾配か、下り勾配かによっても車両の動きに違いが出ます。具体的には、自重よりも重い積荷を積載している場合の加速力は、カラ荷の半分以下ですし、積荷の重心位置によってはコーナリング性能が極端に落ちてしまうなど、車両本体というよりも、積荷の重さが車両の挙動に影響を及ぼす範囲が非常に大きくなります。

宇井 なるほど。現在、日本でも自動運転の一部ともいえる衝突被害軽減ブレーキの装着が、バス・トラックに義務化されましたね。

西村 はい。GVW8t超の大型トラックとGVW13t超のトラクターには「衝突被害軽減ブレーキ」が義務化されました。このうち、もっとも早く導入されるカテゴリーがGVW22t超の車両で、2014年11月1日以降に生産される新型車に対して施行されています。大型車の場合は乗用車と比べてひとつのモデルの販売期間が長いことから、継続車に対する措置も段階的にとられていますが、いずれにしろ2017年9月1日以降に生産されるGVW上の該当車両にはすべて義務化されることになっています。

宇井 今回発表されたダイムラーのフューチャートラック2025に使われている技術というのは、Sクラスや今度のCクラスなどの乗用車とは違っているのでしょうか。

西村 同じサプライヤーから同じ型番のパーツを使っているかといえば違いますが、2眼式のステレオカメラ、短/中/長距離用のミリ波レーダーセンサーを数種類使い分け、状況に応じてそのセンサーから得た情報を融合させながら(メルセデス・ベンツではマルチセンサーフュージョンと命名)、アクセルやブレーキ、ハンドル操作までを自律的に行うプロセスはSクラスやE/Cクラスと同じです。  ただ大型車と乗用車で根本的に違う機構(例:ステアリングなど)が用いられた部分は大型車専用のパーツを用いて実際の制御を行っています。

宇井 それだけ、技術的に完成されているのに、導入目標が2025年と10年もかかる理由は?

西村 まず、どのレベルの自律自動運転を目指すかによって結論は変わってくると思いますが、仮に、今回のように〝ドライバーのサポート〟レベルを前提として考えてみると、すでに技術的な課題はその大部分がクリアされていることから実用化までに10年もかからないと考えています。

むしろ大切なことは法整備。これは乗用車の世界にもまったく同じことが言えますが、自律自動運転に対する責任を誰が負うべきかという議論を技術よりも先に固めていく必要があるからです。「この議論を重ねていくために10年は必要です」とダイムラートラックのトップであるDr.ウォルフガング・ベルンハルト氏はFT2025の発表会場で語っています。

しかも欧州はEU各国をまたいでの物流網が発達していますから、そのすべての国々で共通する法整備が必要になります。現在、ドイツではダイムラートラックを筆頭に、自律自動運転を可能にするため国際法であるウィーン条約を改正する動きが取られていて、早ければ2014年12月までには自動車保険の制度を含めて改正が行われる見通しです。

宇井 地域的な問題もあるわけですね。たとえば、ちょっと戻りますが、トラック本体以外には、たとえばGPSを使ったり、他にもあらゆる情報網を使ったりして、自動運転を支援するわけですよね。

西村 はい、すでにメルセデス・ベンツの大型トラック「アクトロス」(FT2025もアクトロス)は、GPSデータを使って路面の勾配を予め検知して、勾配路を上り切るために必要な駆動力を生み出すためのシフトダウンを平坦路で行うことで燃費数値を最大で3%向上させることに成功しています。  FT2025ではステレオカメラ/ミリ波レーダーに加えて、車々間通信技術用に5・9GHzのワイヤレスLAN技術(自車周囲500mが圏内)を用いて、より高度なACC(CACCと呼ぶ)を成立させています。

「ドライバーは別の仕事を運転中に?」

宇井 自動運転のデモンストレーションでドライバーがまったく他のことをしていましたが、実際そんなことが可能になると思いますか?

西村 技術的には可能だと考えています。ただ、それには電波法の改正や法整備を導入よりも先に行い、受け入れ準備を整えることが大前提です。

宇井 日本でもそうですが、物流を担うトラックドライバーの高齢化や、過重労働などが指摘されていて、この自動運転がそうした問題を解決する大きな社会インフラとして期待されているわけですね。

西村 先進国の多くは超高齢社会への対策が求められています。物流業に対してもそれは同じで、今回の自律自動運転によりドライバーの運転に対する肉体的/精神的疲労度が大幅に軽減されるとともに、運転から解放された車内でタブレットを使った事務作業ができるようになります。これにより、総労働時間を減らすことができるため、経営者としてもTCO(総所有コスト)の削減が期待できるわけですから、各方面から大きな期待が寄せられるのは当然のことです。

宇井 グループ会社である三菱ふそうもこうしたダイムラーの技術を使い日本で取り組みそうですが……。

西村 日本ではトヨタが「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」として2010年代半ばに、日産は「トラフィック・ジャム・パイロット」として2016年に、それぞれ高速道路で使用する部分的な自律自動運転を導入したいとしています。  商用車の世界でも実証実験は国総研を通じて長年行われているため、ダイムラーグループである三菱ふそうが、大型トラック「スーパーグレート」の次期型発表と併せて国内商用車初として導入するかもしれませんね。  日本の高速道路はアップダウンの数が多いだけでなく勾配率も大きいため、自律自動運転による運転操作の高効率化によって、熟練ドライバー並の燃費数値を新米プロドライバーがたたき出す、そんな時代になるのではないかと期待しています。

宇井 では、安全で快適な交通システムができるよう、見守りたいと思いますが、最後に大きな課題があるとしたらなんでしょう?

西村 その昔の「ボタンひとつで目的地へ」といった絵空事の世界から、今日の自律自動運転はかなり現実的な答えを持つようになってきました。しかし、運転により生じるあらゆる責任はあくまでもドライバーが負うべきものです。自律自動運転はどこまで技術が進歩しようともサポート技術であり、ドライバーの身体的な拡張機能に留まるべきものだと考えています。


※取材協力/ダイムラーAG・三菱ふそうトラックバス

※テストの模様はトラック誌「フルロードVol.14」(9月10日発売)でも詳報!

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