利権なのか!? 意味があるのか!? ここがヘンだよ日本の車検

 日本の車検制度が確定したのが1951年。67年も前のこと。少しずつ規制が緩和されてきているものの、クルマの進化に対して未だに「余分じゃないか?」という検査項目も多い。

 車検を取るだけでウン万円の「諸費用」を自治体や国に納め、さらに自動車税なんかもどんどん掛かってくる。2年ごとに車検をする意味はあるのか? 識者に聞いてみました。

文:Boosterpackdepot編集部/写真:
Boosterpackdepot2018年6月10日号


■クルマの平均寿命は伸びても車検は伸びず

 クルマを所有するといろいろかかる諸費用。そのなかでもユーザーが一番頭を悩ませるのが2年に一度やってくる車検だろう(新車時のみ3年)。

 実は本企画担当も2月に愛車の継続車検を取り、なんと整備代&もろもろの税金込みで、37万円もとられてしまった。

 そんな仕方ないけれど負担になる車検が、現代のクルマ社会にマッチしているのかを考えてみるのが本企画。まずはこれまでの経緯を見てみよう。

 日本の車検制度(道路運送車両法)ができたのは今から50年以上前の1951年。クルマでいえば、初代クラウンが登場するはるか前。

 その後、実に59回の改正が行われ現在の車検になっている。最も最近の改正は昨年の2017年で、『はみ出しタイヤOK』になったのは記憶に新しいところ。

 車検制度改正のなかでも、クルマの実情に合わせて大きく変わったのが1995年。それまで102項目あった24カ月の点検項目が大幅に少なくなり60項目になった。

 これによってディーラーや整備工場など専門の業者でしか行えなかった車検が一気に大衆化し、低価格で手軽な車検サービスや、「ユーザー車検」と呼ばれる、自分で車検を通すシステムも生まれ現在に至っている。

 1995年といえば、まだハイブリッドもないし4速ATが主流だった時代だ。あれからクルマは進化しているので、現状に合わせて車検も変える時期にきているのかもしれない。

 またクルマの平均寿命も年々伸びている。自動車検査登録情報協会が調べたデータでは1996年当時は9.27年だった平均寿命が、2016年には12.78年に伸びている。

 つまりこれはクルマが丈夫になっているという証といえるだろう(ただし、部品の耐用年数と整備コストの関係から13〜14年で頭打ちになると言われている)。

 海外の車検も見てみたい。たとえばカナダ、中国、インドネシアには車検がないし、イタリアなどは購入してから10年までは不要。

 そういう国でも日本のメーカーはクルマを売っているんだから、日本の整備業界がいうように、『安全に走るためには車検は絶対必要』という理論はチト違うんじゃないの、と思うよね。

■海外の車検手数料は日本と同じ 日本の車検はなぜ高く感じるのか?

 では各国の車検システムはどうなっているのかを見てみよう。下では諸外国の車検にかかる手数料と検査機関がどのくらいあるかを紹介している。

 日本がズバ抜けて高い検査手数料を取っているわけじゃないということがわかる。日本の車検費用が高いのは、整備代、そして税金が乗かってくるから高い。

 ちなみに日本の自動車保有に関する税金は、ドイツの約2倍、アメリカの約5倍という高さ。さらに日常使う時もガソリン税もプラスされている。

 ああ、これだけで悲しくなってきますね。

税金のせいで日本の車検は高く感じるだけのようだ
車検同時払いの税金のせいで日本の車検は高く感じるだけのようだ

 次に初回3年、その後2年という車検システムの海外事情を調べてみると、フランス、ベルギー、スイスでは初回車検は4年目などと新たな事実も判明。

 ただ日本の場合は、初回の車検以降は2年ごとだが、12カ月点検が義務づけられているので、イギリスなどと同じように実質1年ごとと捉えることもできる。

 それに世界を見渡せば、日本のように点検整備制度が法律で義務づけられている国は少なく、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、韓国などは法律で義務づけられていない。

 つまり、日本に例えれば、車検さえ受けていれば、定期点検は受けなくていいということ(ただ日本の場合も法律で定められているものの罰則はない)。

 さらに整備工場は、国の認定が必要という国も手元にある資料を見ると、25カ国中、日本を含めたわずか6カ国のみ(イタリア、カリフォルニア、オランダ、香港、ベトナム*アメリカは州によって異なる)。

 今政府では「国民負担の軽減を図るとの見地から、車検期間を延長すべき」と方針を出している。

 そこで車検サイクルを3年ごとにするのはまだ無理かもしれないけれど、まずは初回車検は1年延ばして4年にしてもいいんじゃないでしょうか。

■識者が提案 ニッポンの車検はこう変わるべし!!

【OBD2端子を使ったスマートな車検を】鈴木直也

 これだけクルマの品質がよくなってくると、日本の車検制度について疑問を抱くユーザーも増えてくる。

 そもそも、現在の車検制度の原型は1951年の道路車両運送法の制定によって生まれたもの。検査項目の見直しなどは適宜行われてきたものの、基本的な制度は変わっていない。

 60年以上前のクルマは、きちんと整備しないとすぐアッチが壊れたりコッチが故障したりした。つまり、キチンと走って止まるだけでも大仕事。

 車検といえば、エンジンやミッションなどの駆動系、サスペンションやブレーキなどの足回りの整備が主眼だった。

 しかし、現代のクルマで重視されているのは、排ガス浄化性能が規制値をクリアしているか、ABSやESP、エアバッグなどの安全装備が正常に働いているかなど、より複雑で高度な機能。

ハイブリッドシステムなどの診断はOBD2システムがないとできない
ハイブリッドシステムなどの診断はOBD2システムがないとできない

 今後はこれに自動ブレーキをはじめとする自動運転領域の技術テーマが加わってくる。こういう技術的に高度な機能については、じつはクルマ側に自己診断機能(通称OBD2と呼ばれるシステム)が備わっていて、ディーラーで診断ツールを接続すれば簡単にチェックができる。

 今後、クルマ側がどんどんコネクテッド化されてくれば、その情報は逐一メーカー側のサーバに上がるようになり、トラブルの予兆があれば自動的にユーザーにメールで通知がくる……。

 技術的にはすでにその準備はできているのだ。

 クルマの性能を法で定めた水準以上に保つというのが車検制度の趣旨なら、定期的検査という概念ではなく、OBD2などでトラブルの芽を早期発見して、それに対する修理をユーザーに義務づけるという方向が理想なのではないだろうか?

 しかし現実は道遠し。国交省でも車検時にOBD2の活用を検討しているのだが、その対応は早くても2021年以降の新車からになりそう。

 技術向上に制度改革が追いつかない。やっぱりそこが永遠のテーマみたいですね。

【車検整備にかかるお金の整理をすべし】渡辺陽一郎

 自動車の検査制度は1906年に発足したが、今の車検制度は1951年に制定された。その後に改正が行われ、1982年には乗用車の初回車検が、初度登録の2年後から3年後に延びた。

 それでも検査内容に大きな変更はなく、車両の直進安定性を確認するサイドスリップ、ヘッドランプの光軸検査などはあるが基本的には日常点検に近い。

 しかし現在のクルマは、4輪ABS、横滑り防止装置、衝突被害軽減ブレーキ、エアバッグなど、安全面を中心に多くの装備を搭載している。

 横滑り防止装置や衝突被害軽減ブレーキは、万一誤作動が生じると、通常の走行中に突然ブレーキが掛かる危険もある。横滑り防止装置のブレーキ誤作動は、サイズが異なるタイヤを装着した時も起こり得る。

 また今はハイブリッド車が普及して、60年以上も前に制定された車検制度では、補えない点検内容が多い。販売店の点検を受けることが大切で、警告灯にも注意したい。

 車検の基本点検料金は新車販売店で2万円前後になり、継続検査料と代行手数料を加えて合計約4万円だ。ただし車検を受ける時は、2年分の自動車重量税と自賠責保険料も納める。

 これが継続車検の出費を高める。自動車重量税はその時のエコカー減税に該当する燃費数値なら500kg当たり年額2500円だが、そうでない場合は4100円だ。

 車両重量が1300kgの小型/普通乗用車なら、1年当たり4100円×3(1300kg)=1万2300円で、2年分なら2万4600円になる。

 自動車重量税は1971年に道路建設を目的とした税金として徴収を開始したが、今では道路特定財源制度は廃止された。

 従って課税根拠も失ったが「財政事情が厳しい」という理由で、一般財源化されて徴税が続いている。自動車ユーザーが、財政不足の尻ぬぐいをしているわけだ。

 自賠責保険料も不可解で、小型/普通乗用車の2年分は2万5830円だが、定期的に値上げと値下げを繰り返す。自賠責保険は社会政策的な側面を持ち、利益も損失も生じてはならない。

 そこで値上げされた時に保険料を貯め込み、値下げして吐き出すことを繰り返して、保険料の収支バランスを保つ。これもユーザーには迷惑な方法で、一定金額で収支が合うようにすべきだ。

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