世界のクルマの潮流を変えた1台 アウディ・ビッグ・クアトロ 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はアウディ・ビッグ・クアトロを取り上げます。

 1980年のジュネーブショーに出展されたアウディ・ビッグ・クアトロは世界中に衝撃を与えました。それまで4WDといえばパートタイム4WD(必要時のみ四輪駆動に切り替える方式)が当たり前だった時代に、ポルシェ911を超え、WRCで勝つためにフルタイム4WDを採用。

 クアトロがその狙いどおりにWRCを席巻した事実は、「曲がらない」とされていた4WDに対するイメージを完全に変え、以後、世界中のメーカーから優れたスポーツ4WDが多数輩出されてゆくことになります。

 欧州での発売当時は単にクアトロと呼ばれていましたが、1984年4月にヤナセが正式に日本で発売した際は80クアトロと同時だったため、“ビッグ・クアトロ”と呼ばれました。『Boosterpackdepotガイド』1984年6月号の試乗記を振り返ります。

※本稿は1984年5月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:Boosterpackdepot2018年2月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『Boosterpackdepot』にて毎号連載中です


■フルタイム4WDがもたらす安全と安心

 待ちかねたアウディ・クアトロがようやく日本でもヤナセから発売になった。輸入されるのはビッグ・クアトロと80クアトロの2種だが、やはり注目はビッグ・クアトロのほうだろう。

 アウディ80のクーペをベースにするこのクルマのスタイルはコンペティションモデルが持つ機能的で冷たい美しさがある。アウディ・クアトロはWRCで勝つためのロードゴーイングラリーカーなのだ。私はすでに半年ほどビッグ・クアトロに乗っていて、日本の雪道も走った。

 滑りやすい雪道でアクセルのオン・オフを繰り返しても、姿勢変化が少なく、安定感はすばらしいものだった。

オンロードでもそのトラクション性能は異次元のもので、4WDは曲がらないというイメージを覆した
オンロードでもそのトラクション性能は異次元のもので、4WDは曲がらないというイメージを覆した

 そしてフルタイム4WDの魅力は“お金で買える最高の安全”ということに気づいた。雪道だけではない。例えば、雨の日の高速道路をこのクルマほど安心して乗れるクルマはない。

 コーナーでは初期アンダーが気になるものの、コーナリング時の安定性と脱出時のスピードの速さはピカイチだ。4WDにしたことで、タイヤの負担も軽い。シャシ全体にいえることだが、4WDシステムのパワー吸収力はものすごいと感心させられる。

 そのいっぽうでパワフルな走りにもかかわらず、スポーツカーらしいドラマは生まれない。そこにあるのは、大いなる安全とすばらしい乗り心地であり、スポーツカーとしては刺激が足りないことが不満となる。しかし、それは贅沢というものだ。世界中の自動車メーカーが、より安全に、より快適に、を目指していることを考えると、アウディ・クアトロは世界をリードしているといえよう。

1984年のWRCポルトガルを走るクアトロ。アウディは1982年と1984年のマニファクチャラーのタイトルを取っている
1984年のWRCポルトガルを走るクアトロ。アウディは1982年と1984年のマニファクチャラーのタイトルを取っている

■打倒ポルシェ911で誕生したクアトロ

 フェルディナンド・ポルシェ博士の孫でアウディのチーフエンジニアとなったフェルディナンド・ピエッヒの頭の中にはこのクルマのライバルとしてポルシェ911があったことは疑いない。

 ポルシェ911はリアエンジン、リアドライブというパワー伝達で、最もロスが少ない方法をとっているが、アウディはフォーフォイールドライブを用いたのだ。

「コーナーでポルシェ911をぶち抜くクルマ」が開発テーマのひとつだったという。

先進的なクーペフォルムとブリスターフェンダーがビッグ・クアトロの証しだ。タイヤサイズは205/60VR15だった
先進的なクーペフォルムとブリスターフェンダーがビッグ・クアトロの証しだ。タイヤサイズは205/60VR15だった

 ビッグ・クアトロの一番の得意は160km/hくらいでのハイスピードコーナリングだ。ドライバーにとってはスロットルを緩めたくなるが、そこを我慢して踏み続けると、ビッグ・クアトロはノーズを少し内側に向けて、スティアリングを一定角度に押さえたままでクリアする。その安定したコーナリングはほれぼれするものだ。

 ヨーロッパで乗った印象がすばらしかったので、日本仕様のビッグ・クアトロのスペックには正直がっかりした。日本仕様は最高出力160馬力、最大トルク23.5㎏mと欧州仕様の200ps、29.1kgmに比べるとだいぶ落としている。

(上)直列5気筒SOHC2.1L IC付きターボエンジンの最高出力は160ps、最大トルク23.5kgm。欧州仕様の200ps、29.1kgmに比べると排ガス規制のためかなり落ちる(下)5気筒エンジンは縦置きにフロントオーバーハングに搭載されていることがよくわかる
(上)直列5気筒SOHC2.1L IC付きターボエンジンの最高出力は160ps、最大トルク23.5kgm。欧州仕様の200ps、29.1kgmに比べると排ガス規制のためかなり落ちる(下)5気筒エンジンは縦置きにフロントオーバーハングに搭載されていることがよくわかる図

 日本仕様を試乗するまで私は悲観的だった。しかし、実際のドライブでは欧州仕様と大きな差を感じなかった。もし、感じるとしたら0~100km/h加速や0~400m/h加速といったゼロ加速のスプリントで、0~1000m加速になるとその差は縮まるだろう。

 また1984年モデルから値段のわりに作りが雑に感じられたダッシュボードの質感も大いに上がった。ビッグ・クアトロはヨーロッパでも高級車だ。シートはモケットで、オプションの本革シートの仕上げもとてもいい。

(上)レーシーなコックピット回り。センターデフとリアデフがロックできることがわかる(下)豪華なスポーツシートは、コーナリング時の強烈なトラクションにもしっかりサポートしてくれる
(上)レーシーなコックピット回り。センターデフとリアデフがロックできることがわかる(下)豪華なスポーツシートは、コーナリング時の強烈なトラクションにもしっかりサポートしてくれる

 さらに乗り心地がいいこともビッグ・クアトロの美点だ。メルツェデスSクラス並みの重厚な乗り心地を持っている。スポーツクーペなのに、リアシートは大人2人がしっかりと座れるスペースがあることも大いなる魅力。万能スポーツカーとは、このクルマのことをいうのだろう。

◎アウディ・ビッグ・クアトロ 主要諸元
全長:4405mm
全幅:1725mm
全高:1345mm
ホイールベース:2525mm
エンジン:直列5気筒SOHC ICターボ
排気量:2144cc
最高出力:160ps/5500rpm
最大トルク:23.5kgm/3000rpm
トランスミッション:5MT
サスペンション:ストラット/ストラット
車重:1360kg
価格:1100万円
※グロス表記

◎メーカー公表値(欧州仕様)
0~100km/h加速:7秒1
最高速:220+α km/h

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