スバル史上初のフルタイム4WD レオーネ・クーペ RX-Ⅱ 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はスバル レオーネ・クーペRX-Ⅱを取り上げます。
 フルタイム化ではマツダ・ファミリア4WDの後塵を拝したスバルでしたが、日本の4WD車作りのパイオニアであるというプライドが、スバル初となるフルタイム4WD搭載車、レオーネ・クーペRX-Ⅱを誕生させました。
 またその一方で、このレオーネで培われた4WDを始めとした技術の数々が、のちのレガシィやインプレッサといった、スバル、引いては日本の自動車史きっての名車たちの礎になっていきます。
 スバルの記念碑的1台となったレオーネ・クーペRX-Ⅱの試乗記を、1986年6月10日号の『ベストカー』からリバイバル。

※本稿は1986年5月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:ベストカー2017年8月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■スタイリングや内装は落第点

 4WD乗用車というコンセプトでは世界でも最も古いメーカー、スバルがついにフルタイム4WDをラインアップに加えた。レオーネは4WDをラインアップしていたが、世界中でもてはやされている、それはジープタイプのパートタイム4WD車であった。

 しかし、アウディが1981年、クワトロを開発してフルタイム4WDの安定感ある走りは、ドライ路面でも4WDのほうが2WDよりもメリットがあるという主張になった。いわゆるロードカーとしての4WD車である。

オプションでMOMOのステアリングが用意された。左右にスイッチ類がレイアウトされる個性的なコックピット
オプションでMOMOのステアリングが用意された。左右にスイッチ類がレイアウトされる個性的なコックピット

 レオーネもクワトロ登場以降はロードカー4WDのコンセプトに変えており、オートマチック車も登場している。そして、今回のフルタイム4WD車の発売である。そのメカニズムはクワトロとよく似ている。エンジン縦置きのFFをベースとしている。やはり最もシンプルで合理的なのであろう。

 当然パワー配分は50対50になる。メーカーである富士重工(現在のスバル)はこのフルタイム4WDをスポーツユースとしている。だから、エンジンは1.8Lターボ、最高出力120馬力、最大トルク18.2kgmの1種。トランスミッションも5スピードひとつでボディは登場してまだ新しい3ドアハッチバックというものだ。

 世の中、醜いクルマはたくさんある。だから、別にどうってことはないのだが、レオーネのスタイルは一生懸命かっこよくしようとして、その結果が醜いというのだからちょっと困る。

 この3ドアハッチバックにしても、リアスポイラーやステップ下のサイドスポイラーを、はじめから付けるという前提で遮二無二ことを運んでいる。もし、こんなものがなくてよかったら? という発想が見られない。

 だから子どもっぽくなる。この3ドアハッチバックの同様のコンセプトはサニーがすでに採っている。ひとつ、よく見てもらいたい。サニーのほうがはるかに消化していると思う。

徳さんは子どもっぽいと評価したエクステリアデザイン。クーペのように見えるが、ハッチバックとなる
徳さんは子どもっぽいと評価したエクステリアデザイン。クーペのように見えるが、ハッチバックとなる

■10速となるマニュアルミッション

 エンジンは最高出力120馬力、最大トルク18.2kgm。それにウェイトが1110kgだから、けっして“これはすごい”という動力性能ではない。ま、普通というところだが、私はこれでいいと思う。パワーを上げるだけが能じゃない。フルタイム4WDというパワーの吸収力のあるシステムと組み合わせることによって、このあまりパワフルでないエンジンをよりマイルドに感じさせる。

エンジンは水平対向4気筒SOHCターボ。ネット表記に切り替わり120ps、18.2㎏mとなったが、グロス表記では135ps、20.0㎏mだった
エンジンは水平対向4気筒SOHCターボ。ネット表記に切り替わり120ps、18.2kgmとなったが、グロス表記では135ps、20.0kgmだった

 アウディ・クワトロがそうである。200馬力というパワーを獲得しても、少しもドラマチックではない。

 ただ、レオーネについていうならば、ややトルク感がない。せっかく過給しているのに! とこれは残念。ターボラグは最近のものにしては強いほうといっておこう。エンジン音は静かで、回転もまあ気にならぬ程度にスムーズだ。

 トランスミッションはスムーズで、レシオも適切だ。このクルマには1.196という変速比を持つ副変速機がある。これで5速のトランスミッションすべてに20%近い変速を与えることができる。

副変速機を持ち、実質10速のマニュアルミッションとなる。前がローで後がハイだ 副変速機を持ち、実質10速のマニュアルミッションとなる。前がローで後がハイだ
副変速機を持ち、実質10速のマニュアルミッションとなる。前がローで後がハイだ 

 これは、このクルマが国内ラリーを目指していることを表している。国内ラリー車はクロスミッションになる低速での細かい変速を要求する。この副変速機があれば、少なくともサード以下が5速として使える。

 箱根のワインディングロードでも充分有効で面白い。これからマニュアルボックスは少なくなるいっぽうだが、今後6速あるいは7速になり、より高価なものになる可能性がある。こいつはその先鞭といえるかもしれない。操作はクラッチを踏むことが必要だが、クラッチレスでできるならもっといい。

 足周りは相当に硬い。しかし、このクルマの昔からの美点であるたっぷりとしたストロークはそのままだ。しかし、ダンパーの質の問題だと思うが、ピッチングが強いのは少々興ざめだ。高速道路のつなぎ目などを通過するとき、必ずピョコンと頭が上下する。

 ハンドリングはオリジナルのFFレオーネに近い。ある程度までスピードが高まればノーズが外にやんわりと持ち出すのはFFの特徴であり、それをスロットルオフで戻すことができるのもFFならばこそ。レオーネRX-ⅡはこのFFのハンドリングの特質をそのまま持っている。

 ではフルタイム4WDになったメリットは何かといえば、FF的ハンドリングを持ちつつきわめて高い安心感というべきか。初期アンダーステアも過度に強くなく、ロール剛性もしっかりとしていて、ハイスピードコーナリングができる。

 ファン・トゥ・ドライブかというと、腕のある人にとってはけっして、ファンではない。しかし、普通の腕前ならば新しいコーナリングの世界を見せてくれるはずだ。

 結論として、スバル初のフルタイム4WDを搭載したレオーネはいかにも4WDの経験の深い、完成度と扱いやすさを持ったモデルになった。スタイルや内装の問題は論外だが、フルタイム4WDの出来ならファミリア1600DOHCよりも使いやすいと思う。

ラリーを意識したホワイトの鉄ちんホイールを装備。タイヤサイズは185/60R14で最低地上高は180mmだ
ラリーを意識したホワイトの鉄ちんホイールを装備。タイヤサイズは185/60R14で最低地上高は180mmだ

◎レオーネ・クーペ RX-Ⅱ 主要諸元
全長:4370mm
全幅:1660mm
全高:1405mm
ホイールベース:2465mm
エンジン:水平対向SOHCターボ
排気量:1781cc
最高出力:120ps/5200rpm
最大トルク:18.2kgm/2400rpm
トランスミッション:5MT
サスペンション:ストラット/セミトレ
車重:1110kg
10モード燃費:12.2km/L
価格:191万円
※ネット表記

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