1978年、世界を撃ち抜いた和製スーパーカー マツダ サバンナ RX-7 試乗 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

 徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はマツダ サバンナRX-7を取り上げます。
 マツダのロータリーエンジン搭載車の第5弾 サバンナクーペの後継車として、1978年3月に発表されたのがサバンナRX-7でした。
 当時の排気ガス規制(1978年)によって牙を抜かれた日本車の中にあって、リトラクタブルヘッドライトに象徴されるスタイリングと、排ガス規制には不利と考えられていたロータリーエンジンを搭載したサバンナRX-7は、日本のみならず世界にも大きな衝撃を与えました。
 徳さんがポルシェ924と比較試乗した『ベストカーガイド』1978年6月号の試乗記をリバイバル。

※本稿は1978年5月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:ベストカー2017年8月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■ポルシェ924との比較

リトラクタブルヘッドライトに加え、1260㎜という低い車高によってCd値は0.36を獲得。前後重量配分は前50.7対後49.3を実現。FRのスポーツモデルとしては理想に近かった
サーキットを走り抜ける徳さんとRX-7。リトラクタブルヘッドライトに加え、1260mmという低い車高によってCd値は0.36を獲得。前後重量配分は前50.7対後49.3を実現。FRのスポーツモデルとしては理想に近かった

 ニューサバンナRX-7を初めて見たのは東洋工業(現マツダ)の三次テストコースであった。多くのマニアたちがポルシェ924やトライアンフTR7との近似性を指摘したが、わたしはそれよりもリアスタイルからイギリスのTVRを思い浮かべ、グリーンハウススタイルから同社のコスモ・スポーツを感じ取ったのである。

 GTカーとかスポーツカーという種類のクルマにとってスタイリングは単に、乗員、荷物が雨風を凌ぐといった意味以上のものを持つ。

 また純粋レーシングカーではないので、ただ単に空力学的に優れるというのでも不充分だ。進歩的なエンジン、シャシーを包み、充分な居住性を確保し、そのうえで現代的に美しく、普通の乗用車とははっきり隔絶した次元のものが要求される。

 ポルシェ924もRX-7もその基本とするスタイルのコンセプトは同じである。しかし、一緒に並べてみると、ポルシェの低く、前に行くほど下がるスタイリングにスポーツカーらしさを感じるのはわたしだけではあるまい。

発売前から何かとポルシェ924と比較されたサバンナRX-7。実際にアメリカではプアマンズポルシェと呼ばれることもあった
発売前から何かとポルシェ924(右)と比較されたサバンナRX-7。実際にアメリカでは“プアマンズポルシェと呼ばれることもあった

 特にリアスタイルは基本的に大きな差がある。ポルシェは大きく回り込んだリアウィンドウがそのままハッチバックになり、いっぽうのRX-7は、これが3分割され、中央のガラスハッチのみが開閉できる。

ガラスハッチを採用し、低くワイドなプロポーションを強調する。輸出仕様は2シーターだが、国内仕様は2プラス2の4人乗りだった
ガラスハッチを採用し、低くワイドなプロポーションを強調する。輸出仕様は2シーターだが、国内仕様は2プラス2の4人乗りだった

 シンプルということ、より完成度が高いということで、やはりスポーツカー作りに慣れているポルシェはうまい。全体的に見るとポルシェはグラマラスでポッテリしており、RX-7はサイズよりも小さく見える。

 RX-7のスタイルはよくいえば、野性味に溢れ、悪くいえば洗練性が足りない。しかし、少なくとも理論的にも見た目にも完成度の高いセリカよりも、このRX-7の未完成で荒削りなところに魅力を感じる。スポーツカーというものは、この手の主張があったほうがいいと思うのだ。

 コックピットのデザインはよくもまあ、こんなに似るものだとあきれるくらい似ている。両車ともに仕上げは良好だが、違いはシートのデザイン。ポルシェのそれは高い着座姿勢と例により硬いシート、そして見事なほどの形状によりドライビングポジションは完璧。

当時としてはかなりスポーティなコックピット周り。380㎜の小径ステアリングを採用しスポーツカーとしての機能とムードを演出した
当時としてはかなりスポーティなコックピット周り。380mmの小径ステアリングを採用しスポーツカーとしての機能とムードを演出した

 これに対して、RX-7のそれはポジションがイギリスのスポーツカー風で純粋にストレートアームが要求される。それはいいのだが、シートが柔らかすぎること、横方向のサポートが不足な点が不満だ。スポーツカーのシートは単に見てくれだけでは不充分であることをポルシェに乗ると理解させられる。

■目を見張る高速性能とハンドリング

 RX-7の高速性能については三次のテストコースでたっぷりとテストすることができた。5MTはもちろん3ATにも乗った。どちらもスピードメーター上で楽々180km/hを記録した。180km/hになるとキャブレターのコントロールでスピードの上昇が止められる。この180km/hを5MTはフォースで6500rpm、トップで5200rpmでマークでき、まだトルクを残していたので190km/hくらいまで伸びる実力はありそうだ。

 日本では180km/hというスピードは非現実的なものではあるが、そこでわざわざ止めなければならないルールも不可解なものだ。トップスピードというのはそのクルマの安全マージンの目安として必要なのに。

エンジンはサバンナがすでに採用した12Aロータリーで昭和53年排ガス規制対策を施したものだ。最高出力130psでGTのパワーウェイトレシオは7.7㎏/ps
エンジンはサバンナがすでに採用した12Aロータリーで昭和53年排ガス規制対策を施したものだ。最高出力130psでGTのパワーウェイトレシオは7.7kg/ps

 残念なのはシフトフィーリングに難があり、ワインディングロードで少々シフト操作が遅れがちになることだ。シフトフィーリングは明らかにポルシェのほうがいい。そしてRX-7は2L、100hpのポルシェよりも明らかに速いが、80km/h以上でのパンチはむしろポルシェのほうがいい。

 ハンドリングについてはRX-7は国産車には珍しくロールの少ないしっかりとしたもので、その強力なパワーにより、オーバースティアも意のままである。フロントミッドのせいか、アンダースティアは適度で中速コーナーをサードのフルスロットルで回り込んでも、スティアリングの保舵力は高まらず、きれいにラインをトレースする。

 スティアリングはキックバックも少なくフィーリングはいいが、パーキングスピードでは少々重い。

 ポルシェはこの分野にこそ、最も精通しているクルマであり、やはり一枚上手である。とにかくビシッとしてスティアリングの剛性が高い。

 ポルシェのコーナリングは絶妙で、トランスアクスルをあえて用いている理由ははっきりする。コーナリングパワーは極めて高く、クルマのバランスがいいので、ドライバーは意のままに操ることができる。

 結論をいうなら、正直ポルシェのほうがすべてで一枚上手だ。しかし、両車の価格差(ポルシェ924・4MT仕様:438万円、サバンナRX-7・5MT仕様:144万円 ※いずれも当時)ほど差があるかといえばNOだ。RX-7がローコストのわりに上等な仕上げと充分なパフォーマンス、スポーツカーらしい味付けのドライブフィールを持っていることを褒めたい。今後はより本格派へと発展することを望みたい。ちなみにテスト時の燃費はRX-7は6.4km/L、ポルシェ924が8.4km/Lであった。

RX-7は1982年にWRCにチャレンジ。翌年ベルギーにMRTE(マツダ・ラリー・チーム・ヨーロッパ)を設立し、参戦体制を強化したが、’85年アクロポリスの3位が最高位だった
RX-7は1982年にWRCにチャレンジ。翌年ベルギーにMRTE(マツダ・ラリー・チーム・ヨーロッパ)を設立し、参戦体制を強化したが、’85年アクロポリスの3位が最高位だった

◎サバンナRX-7 GT(SA22C)主要諸元
全長:4285mm
全幅:1675mm
全高:1260mm
ホイールベース:2420mm
エンジン:12A型ロータリー
排気量:573cc×2
最高出力:130ps/7000rpm
最大トルク:16.5kgm/4000rpm
トランスミッション:5MT
10モード燃費:10.2km/L
車重:1005kg
価格:144万円
※グロス表記

0~400m加速:16.86秒
0~60km/h加速:5.26秒
0~100km/h加速:10.12秒
※いずれもベストカーガイドのテストデータ

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