クルマ好きはなぜスイフトスポーツを愛するのか? 人気の秘訣に迫る

クルマ好きはなぜスイフトスポーツを愛するのか? 人気の秘訣に迫る

 スズキのスイフトスポーツが人気です。

 2017年9月に発表・発売され、先代型の1.6L、NAから同車初の1.4Lターボを搭載(※一部数字が誤りだったため訂正しました 2/27 19:35)、2ペダル仕様は先代のCVTからATに戻され、ボディはやや拡大して3ナンバーに(全長3890×全幅1736×1500 mm)。先代比70kg軽量化を達成し、周囲を驚かせました。

 そんなスイフトスポーツは2017年11月に777台、12月に1544台、2018年1月に1020台と好調な売り上げを記録し、クルマ好きからも高い評価を得ています。売れてるしクルマ好きにも好評という、珍しいモデルとなったスイフトスポーツ。その人気の秘訣はどこにあるのか? 細かい視点で量販車をチェックする自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏にじっくりチェックしてもらいました。

文:渡辺陽一郎 写真:池之平昌信


■まずは「価格」が大きな魅力

 クルマ好きの間で高い人気を得ている車種がスイフトスポーツだ。

 最も分かりやすい人気の理由は価格だろう。緊急自動ブレーキを作動できるセーフティパッケージ装着車でも192万2400円に収まる。

スイフトスポーツの標準グレード6MTは183万6000円、6ATで190万6200円。破格と言っていいお得感のある値付け
スイフトスポーツの標準グレード6MTは183万6000円、6ATで190万6200円。破格と言っていいお得感のある値付け

「200万円」は今も昔もクルマ選びの基準で、2000年頃まではミニバンやLサイズセダンの特別仕様車を選べた。それが今では安全装備や環境性能の向上で価格帯が高まり、平均所得は1990年代を下まわるから、小さなクルマに代替えする「ダウンサイジング」も進んだ。200万円以下のスイフトスポーツは、多くのユーザーにとって購入しやすい。

 しかもスイフトスポーツでは、安価なコンパクトカーに乗っている印象が皆無だ。一種の「本物感」が魅力の柱になる。

 本物感の要素は多く、まず内外装のデザインに注目したい。スイフトはベースモデルも含めて、居住空間や荷室が狭いが、所帯じみた雰囲気を感じさせない。実用性を諦めた代わりに質を高め、欧州車的な趣味性も身に付けた。

内装も「ストイック」というほどではないが、スポーツ感はあるし、快適性もある。雰囲気抜群
内装も「ストイック」というほどではないが、スポーツ感はあるし、快適性もある。雰囲気抜群

■「大人っぽいスポーティカー」は実質スイスポだけ

 2つ目はボディ、メカニズム、パーツなどの本物感だ。

 ボディはスイフトをベースにしながら、スポット溶接箇所を12点増やすなど手間を費やした。エンジンは専用にチューニングされた直列4気筒1.4Lのターボで6速MTも採用する。サスペンションにはモンロー製のストラットやリヤショックアブソーバーが採用され、ブレーキサイズも拡大した。

 このようにスイフトスポーツは、かつてのランサーエボリューションのような独立した高性能車に仕上げられ、本物感もフィットRSホンダセンシング、ヴィッツハイブリッドスポーツパッケージなどを上まわる。

 トヨタと日産もスイフトスポーツを視野に入れ、ヴィッツGRスポーツ、ノートニスモを用意するが、チューニングカーの性格が強過ぎる。外観もベース車との隔たりが生じて子供っぽい。大人っぽいコンパクトな国産スポーティカーは、今では実質的にスイフトスポーツしか選べない。

 スイフトスポーツの魅力は、ベース車のスイフトが優れた素性を備えることに基づく。後席や荷室が狭い代わりに、デザインと走りに磨きをかけ、スイフトスポーツの魅力を際立たせている。

 特に1.4Lターボやエアロパーツなどを搭載しながら、1トンを下まわる車両重量はベース車のクルマ造りによるところが大きい。

先代から70kg軽量化を成し遂げた現行スイフトスポーツ。走行性能もガラッと変わった
先代から70kg軽量化を成し遂げた現行スイフトスポーツ。走行性能もガラッと変わった

■スイフトスポーツは「最後の駆け込み寺」

 最近の趣味性の強い国産車には、SUVやフロントマスクの派手なミニバンが増えた。軽自動車もカスタムはフロントマスクが派手だ。これらが好みに合わない人にも、スイフトスポーツは魅力だろう。

 現行スイフトスポーツのフロントマスクは、従来型に比べると睨みを利かせるが、ボディが小さいから周囲の車両を威圧する雰囲気はない。

どう見てもスポーティカーではあるが、どこか愛嬌があるスイフトスポーツ
どう見てもスポーティカーではあるが、どこか愛嬌があるスイフトスポーツ

 つまりスイフトスポーツは、今の大人のクルマ好きにとって、最後の「駆け込み寺」なのだ。

 スポーツカーの減少と高性能化、ロードスターや86の250万円オーバーに疑問を感じる人、ミドルサイズスポーツセダンの衰退を悲しむ人、大径タイヤのSUVとかフロントマスクの派手なミニバン、軽自動車にゲンナリしている人、そして身の丈に合った軽くて運転の楽しいクルマが大好きな人……。

 多くのターゲット層がスイフトスポーツを買っている。

 見方を変えると、スイフトスポーツの高人気は、今のクルマ界に向けた不満や諦めの裏返しだ。自動車メーカーには、日本のクルマ好きをもう少しキチンと見て欲しい。スイフトスポーツが「駆け込み寺」では困る。かつての日本には、同じようなコンパクトなスポーツハッチがたくさんあった。

 

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