あおり運転助長の恐れも “追越車線居座り”の危険と罰則

 2017年6月5日に東名高速道路上で発生した「あおり運転」による痛ましい死亡事故は、大きな議論を呼んだ。この背景には、多くの人達があおり運転をされたり、目撃した経験があったのだろう。

 「あおり運転」は非常に危険な行為で、法整備も含めた更なる対策が求められるが、同様に危険でありながら、高速道路上で減らないのが、追越車線を漫然と走り続ける行為だ。

 この行為は法定速度内であっても明確な違反行為で、周囲の車に危険を招き、あおり運転を助長するリスクもある。

 実は現在でも取り締まり自体は行われているが、残念ながら違反行為であることがドライバーに浸透しているとは言えず、周知徹底も含めて課題は多い。

文:渡辺陽一郎
写真:Adobe Stock


まずは「あおり運転」の罰則と違反をおさらい

 そもそも、あおり運転はどのような罰則・違反に該当するのか、冒頭で触れた2017年6月のあおり運転による事故では、過失運転致死傷罪ではなく、危険運転致死傷罪で起訴された。

 また、現時点では、あおり運転自体を対象とした罰則は定められていないが、取り締まりは行われている。検挙されると、「車間距離保持義務違反」、「追い越し方法等違反」、「進路変更禁止違反」などに該当する。

 ただし、これらの違反は過失に基づく罰則だから、違反点数は1~2点と少ない。

 あおり運転は相手車両に対する威嚇を目的にしており、単純に車間距離を詰めすぎた車間距離保持義務違反などとは本質が異なる。そのために今後は、法整備が進む可能性もある。

 以上のように、現在はあおり運転に世間の関心が集中しているが、実際に高速道路を走行すると、別の事例も見えてくる。それが追越車線(第3通行帯)を延々と走り続ける車両だ。

追越車線居座りはどのような「違反」に該当?

追い越しが終わった後も「追越車線」に居座る行為は交通の流れを阻害し、他車への危険を招くれっきとした違反行為。これは単なるマナーの問題ではない

 追越車線上を低い速度で走り続ける車両がいても、それに対してあおり運転をして良いことにはならない。あおり運転は状況がどうであれ、危険性の高い運転になるからだ。

 しかし、追越車線を走り続けることが、あおり運転を助長する可能性も高いだろう。また、追越車線上を走り続ける車両がいると、中央の走行車線(第2通行帯)を走りながら、追越車線上の車両を追い抜くドライバーも多い。

 法定速度の範囲内であれば、追越車線上の車両を走行車線から追い抜いても違反にはならないが、好ましい走り方ではない。高速道路では、追い越し車線のみで追い越しをすることにより、車線変更時の事故防止を図っているからだ。

 いずれにしろ、追越車線を走り続ける車両がいると、円滑なクルマの流れを滞らせ、後続車両のドライバーにストレスを与え、事故の危険も高めてしまう。

 そのために追越車線を走り続けると、「通行帯違反」(違反点数は1点)とされ、取り締まりの対象になる。

 どのくらいの時間・距離を走ると違反になるかは具体的に定められていないが、追越車線は文字通り“追い越しをするために走る車線”だ。

 追越終了後に、速やかに安全を確認しながら走行車線に戻らねばならない。追い越しを終えても追越車線を走り続ければ、違反が成立する。

 また、追い付かれた車両の義務違反(違反点数は1点)もある。

 法定速度内で後方の車両から追い付かれた時は、左側へ車線を変えたり、1車線道路では左側に寄って進路を譲らねばならない。

 追越車線を走り続けた場合は、通行帯違反が明白に成立するが、追い付かれた車両の義務違反にも抵触する。

通行帯違反の取り締まり実績は?

【図表】2017年の高速道路における交通違反取り締まり件数。通行帯違反は2番目に多い違反だ。『平成30年版交通安全白書』(内閣府)より作成

 高速道路における通行帯違反の取り締まりは、比較的活発に行われている。内閣府のまとめた交通安全白書(平成30年版)によると、2017年における高速道路での車両通行帯違反は6万1362件であった。

 高速道路の違反で最も多いのは「最高速度違反」で37万4085件に達するが、車両通行帯違反も2番目に多い。

 あおり運転を防止するには、追越車線を走り続けるようなあおり運転の原因をなくすことも大切だ。

 追越車線上を走り続けることが、危険を誘発する誤った運転であることを周知徹底させねばならない。

 取り締まりも大切だが、その前段階の周知徹底させる努力を怠ったのでは、取り締まりが「税金稼ぎ」の手段になってしまう。速度違反と同様の危険な運転であることを、多くのドライバーに知らせることが先決だ。

追越車線を漫然と走る車への対処法

 さて、高速道路を走っている時、追越車線上を走り続ける車両がいた時はどうするか。当たり前だが、後方であおる運転をするのは厳禁だ。

 まずは車間距離を十分にあけた上で、ヘッドランプによるパッシングをする。後続車両の存在を知らせ、同時に「道を譲って欲しい」意図も伝えられるからだ。

 このパッシングにもコツがある。ドアをノックする要領で、パチ、パチッと光らせれば、相手に悪い印象を与えにくい。「すみません、車線を移してもらえませんか」というメッセージだ。

 しかし、ハイビームをビカーッ!と浴びせると「そこをどけ」という乱暴なニュアンスになってしまう。少し大げさにいえば、パッシングにも人格のようなものが表現されるから注意したい。ドライバーの気持ちの表現だから、「すみません」と思っていれば、自然にそういうパッシングになる。

 パッシングをしても追越車線に居座っている時は、自分は中央の走行車線に移る。後に続いていると、自分まで追い越しの必要がないのに、追い越し車線を走ることになるからだ。後続の車両から自分があおられる危険も生じる。

 中央の走行車線に移ったら、しばらく追越車線を走り続ける車両の左斜め後方を並走する。それでも走行車線に戻る様子がない時は、中央の走行車線を走りながら追い抜く。

 ただし、これは前述のように危険が伴うから、降りるインターチェンジが近い時は、そのまま走行車線を走り続けるのが良い。

 追い抜く時は、相手車両の前輪に注意する。前輪が少しでも左側を向けば、車線を変えてくる可能性が高いからだ。

 残念ながら、追越車線を走り続けるドライバーに上手な運転やマナーは期待できない。何も考えずに漠然と走るから、追越車線に居座る。このようなドライバーは何をするかわからないので、追い抜く時には前輪の微妙な動きなど、車両挙動の変化に気を付けたい。

 できれば追い抜きは、左車線(第1通行帯)に並走車両がいないタイミングを見計らって行う。そうすれば万一左側へ進路を変更されても、逃げやすいからだ。

◆  ◆  ◆

 追越車線を走り続ける車両に遭遇した時は、第一に安全を優先させる。それは相手車両を含めた周囲の安全確保にも繋がる。

 そして、パッシングなどを行って反応がなければ、走行車線に移って距離を離す。自分も一緒に追越車線を走ると、追突などの被害に遭遇しやすいから注意したい。

(※本稿では、車線変更をしない「追い抜き」と車線変更を伴う「追い越し」を使い分けて表記しています)

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