交番女子の生態が判明!! 『ハコヅメ 〜交番女子の逆襲』作者登場

『モーニング』にて人気連載中の『ハコヅメ 〜交番女子の逆襲』。以前当サイトでも紹介して多くのアクセスを集めた本作ですが、いよいよ4月23日に単行本1巻が発売となります。

 その単行本発売を記念して、作者である泰三子(やす みこ)先生に特別インタビューをお願いいたしました。匿名匿住所の覆面作家、泰先生。「元某県警の婦人警官」というだけでいっさい秘密の泰先生に、婦人警官についてたくさんお話を伺いました!!

文:BoosterpackdepotWeb編集部


■怖くて「やめます」とは言えなかった

BoosterpackdepotWeb編集部(以下、Boosterpackdepot) 本日はよろしくお願いいたします。まず基本的なことを伺いたいのですが、婦人警官になるためには公務員試験を受けることになるんですよね?

女性警察官のマンガはこれまでいくつかあったが、ここまでリアルなものは珍しい。なにしろ本作を執筆直前まで本職でした
女性警察官のマンガはこれまでいくつかあったが、ここまでリアルなものは珍しい。なにしろ本作を執筆直前まで本職でした

泰三子先生(以下、泰先生)はい、筆記と体力試験、論文と面接です。

Boosterpackdepot 体力試験があるんですか。

泰先生 はい。身長と体重の制限がありますので(例えば警視庁の場合、女性は身長が「おおむね154cm以上であること」、体重が「おおむね45kg以上であること」と)、それをしっかり測られます。そのあとで、腕立て伏せだとか、基礎的な体力を見ます。

Boosterpackdepot 腕立て伏せは何百回も出来ないとダメ、というような試験なのでしょうか?

泰先生 というより「何分間に何回できるか」というような試験でした。

Boosterpackdepot あ、なるほど。「明らかに鍛えてもダメそうな人を落とす」というような目的の試験なんですね。

泰先生 そういうことだと思います。

Boosterpackdepot 『ハコヅメ 〜交番女子の逆襲〜』作中で、主人公は「安定した仕事に就きたかったから公務員を目指した。自分が受かりそうなのが警察官採用試験くらいだったので、警察官になった。別にどうしても警察官になりたくて目指したわけじゃない」というような台詞が出てきます。これは泰先生も同じだったのでしょうか?

主人公は「公務員になりたかったが、なれたのは警官だけだった」という新米女性警察官・川合
主人公は「公務員になりたかったが、なれたのは警官だけだった」という新米女性警察官・川合

泰先生 あれは、「ああいう同期生が多かったから」ということで描きました。わたし自身はわりと「警察官になりたくてなった」というタイプでしたね。

Boosterpackdepot 警察官になりたかったんですか。

泰先生 はい。

Boosterpackdepot その試験に合格したあと、警察学校へ入るわけですか。警察学校はどんなところなんですか?

泰先生 まずスマホは全員取り上げられます。わたしの受けた「警察官B」という枠だと10ヶ月間、大卒の「警察官A」だと6ヶ月間。法律の勉強や体力、拳銃の授業などを受けます。

Boosterpackdepot カンヅメにされるんですか。それは「もう嫌だ」とならないんですか。

泰先生 めちゃめちゃなります。ただ「これを耐え抜けば警察官という仕事にありつける」という思いで耐えるわけです。それと恐怖ですね。

Boosterpackdepot 恐怖。

泰先生 当時はとても「やめます」とは、怖くて言えませんでした。

Boosterpackdepot あ、ガチなやつですね。

泰先生 ガチです。

Boosterpackdepot でも実際の暴力はないんですよね?

泰先生 それはないですね。ただ運動の授業で走らされるとか。

Boosterpackdepot 走らされる。

泰先生 倒れたら引きずられますし。

Boosterpackdepot ひ、引きずられる。

泰先生 日常風景ですね。ですから、なるべく倒れないように走るしかないんです。限界を設けてもらえませんでした。

■朝8時から翌朝の8時まで勤務

Boosterpackdepot それを耐え抜くと、いよいよ採用となるわけですね。どんな配属部門があるんでしょうか。

泰先生 そうですね、地域部門と刑事部門、交通部門と警備部門、警務(総務)部門が主だった部署です。最初は交番勤務なので地域部門に配属されます。

Boosterpackdepot ざっくりで構わないんですが、交番勤務の警察官の1日のスケジュールを伺えないでしょうか?

秦先生 県警によっても違うと思うのですが、わたしのいたところでは3交代制でした。新任の場合だと朝7時くらいに出勤して掃除をしたり朝礼に出て、8時半頃に交番へ行って、翌日の8時半に交代員が来るまで仕事をする、と。

Boosterpackdepot え、いきなり24時間勤務なんですか……?

秦先生 いちおう夜には仮眠の時間が4時間あります。まあ4時間まるまる寝られることは少ないんですけどね。

Boosterpackdepot 某広告代理店なみのブラック勤務に聞こえるんですが……。

秦先生 ずっとそれが普通だと思っていました。

交番勤務だけでも激務なのに、非番もばんばん駆り出されるそう。こ、これでは民間企業の超過勤務もなくならないわなぁ……
交番勤務だけでも激務なのに、非番もばんばん駆り出されるそう。こ、これでは民間企業の超過勤務もなくならないわなぁ……

Boosterpackdepot 食事はどうしているんでしょうか?

秦先生 各自お弁当だったり……出前を取るケースもあるんですけど、出前だと頼んだ直後に「事案」や「現場」があって出なければならないと、お店の方に迷惑をかけることになりますから、頼みづらいんですよね。

Boosterpackdepot な、なるほど。それでその24時間勤務が終わったら、ひたすら寝るわけですか。

秦先生 とりあえず寝ますが、書類を作らなくちゃいけないので……。

Boosterpackdepot どんな書類を作るんでしょうか。落とし物とか?

秦先生 遺失物届けは簡単な書類なのですぐ作れるんですが、事件の実況見分だとか報告書は、見取り図を描いたり文章を書くことになるので時間がかかるんですね。なので勤務時間中にはできないので、休みの日にやることになります。

Boosterpackdepot 交番のお巡りさんって、めちゃくちゃ忙しいんですね。

秦先生 県警によって違うかもしれませんが、はい、すごく忙しかったですね。

■指紋もとるし、それで犯人が捕まると

Boosterpackdepot どういう書類作りが一番手強いんでしょうか?

秦先生 新人が一番苦労するのは実況見分ですね。車上ねらいや空き巣などが起こると、その被害状況をすべて説明しなければなりません。例えば空き巣だと、タンスのひきだしが何センチ開いていたかなども全部測っていかなければならないので。

Boosterpackdepot あ、じゃあ空き巣って、入られたら警察に通報する前にひきだしとかいっさい触らないほうがいいんですか。

秦先生 はい、何も触らないほうがありがたいです。犯人の指紋も取れなくなりますし。

Boosterpackdepot もしかして交番の警察官も指紋をとったりするんですか?

秦先生 鑑識の方も来てくれるんですが、現場が重なってたりすると交番勤務の警察官が指紋をとることもあります。学校でひととおり習っているので、出来たりするんです。

Boosterpackdepot 交番の警官が指紋を採取して犯人がわかったりするんですか?

秦先生 そういう場合もあります。そうなると署長賞などをもらえたりします。お手柄ですね。

Boosterpackdepot 交通取り締まりについても教えてください。交番勤務の警察官も交通違反を取り締まったりするんでしょうか?

交通取り締まりでは罵倒されることもしょっちゅうだそうです
交通取り締まりでは罵倒されることもしょっちゅうだそうです

秦先生 交番の警察官としては、「見つけたら取り締まる」というかたちでした。あとは交通課が実施する速度取り締まりの応援に行ったりすることもあります。非番の時に「今から(ネズミ捕りなどを)やるよ。来る?」と言われたりして。

Boosterpackdepot え、でも非番ですよね?

泰先生 はい。でも断る選択肢はありませんでした。

Boosterpackdepot いちおう残業手当や休日出勤手当は出るんですよね?

泰先生 はい、警察官にも超過勤務手当という申請が出せます。ただ月100時間を超えると法律で病院に行かなければいけないので、それはまずいからということで、100時間を越えないように調整して提出していました。

Boosterpackdepot 真っ黒じゃないですか。

■捕まえてみたら年金ぐらしのお婆さんで

Boosterpackdepot 印象に残っている交通違反の取り締まりはありますか? 例えば作品には「捕まえてみたら年金ぐらしのお婆さんで違反切符を切るのに心が痛んだ」というエピソードがありましたが。

泰先生 違反を見つけると反射的にビッと止めてしまうんですね。そうすると見逃すわけにはいかないんです。おとなしそうなお婆さんとかだと本当に寝る前に思い出して心が痛むんですけれども……。

取り締まりでも心が痛むことがあり、夜、布団の中で思い出すそうです
取り締まりでも心が痛むことがあり、夜、布団の中で思い出すそうです

Boosterpackdepot それでも「見逃す」というわけにはいきませんか。

秦先生 もしここで見逃して、このお婆さんがそのすぐ先で事故を起こしたらどうしよう……と考えてしまうんです。それとやっぱり取り締まり件数が増えると事故件数は減る、というデータもあるんですね。だから取り締まるしかないんですけど……いっそ文句のひとつでも言ってくれないか、と思ってしまいます。

Boosterpackdepot そういう心境になるんですか。

秦先生 やいやい言ってくれたほうが切符は切りやすいです。下を向いて「どうしよう、家族に叱られる」と落ち込んでいる年金ぐらしのお婆さんよりは、悪態をつかれたほうが「はい、1万8000円です」と切符を渡せますね。

Boosterpackdepot なるほど。

泰先生 捕まった時って、その方の本質が垣間見えるんです。ある時、すごく恰幅のいいスナックのママさんを交通違反で捕まえた時に、ハンドルを叩きながら「くそっ、くそっ!」と悔しがっているですね。こちらは悪態に慣れているので「すみません」と言ったら、「なんであなたが謝るの。あなたは仕事でやっているんでしょう。わたしは自分に腹が立って怒ってるだけなんだから、謝ることなんかないよ」と言われたんですね。あー、こういうことを反射的に言えるのはすごいなーと感心しました。

Boosterpackdepot 人間の器が大きいですね。

秦先生 カッコいいですよね。切符は切りましたけれども。

Boosterpackdepot なるほど。捕まえたあとで、「こういうことを言われたら嫌だな」というような言葉はありますか?

秦先生 嫌な言葉……ですか。うーん……あまり聞いてないんですよね。

Boosterpackdepot 聞いていない。

秦先生 「ここで言われても仕方がないので、あとで不服申立てをしてください」という説明をしますので。

Boosterpackdepot 延々と言い訳をしたり悪態をつく人はそれほど多くないんですか?

秦先生 基本、言い訳したり悪態をつかれたりしますね。

Boosterpackdepot どんなパターンを覚えていますか?

秦先生 立派な雰囲気の男性が「私は警察の誰々さんを知っている、このことときみの名前は電話しておくぞ」と言ってくるケースはたまにありました。「どうぞ電話してください」としか思えないんですけどね。

Boosterpackdepot なかなか見苦しくていい感じですね。

見苦しいほうが切符は切りやすいそうです。な、なるほど
見苦しいほうが切符は切りやすいそうです。な、なるほど

秦先生 基本的にわたしたちは事故が減ればそれでいいので、次からは安全運転を心がけてくだされば、捕まった直後はどのような態度をとってもらっても構いません。

Boosterpackdepot 作品のなかで「自我を制服に乗っ取られている(ような警察官がいる)」という、非常に印象的な台詞がありました。「警察の権威」を「自分の権威」と勘違いして威張っているようなタイプの警察官です。ああいう人は多いんでしょうか?

秦先生 多くはありませんが、いますね。あの話で言いたかったのは、「そういうタイプは身内にも嫌われているんですよ」ということです。勘違いして威張る人は、内部でも迷惑に感じているんだと。

Boosterpackdepot 嫌われているんですか。

秦先生 ええ。そういう人はでも、現場を重ねることで叩かれて揉まれて、だんだんこうべを垂れていくことになります。最初はみんなわからないんですよね。それがわかっていく、ということです。

■あの時の高校生に届くようにと

Boosterpackdepot 最後に、泰先生が「漫画家になろう」と思ったキッカケはなんだったんでしょうか?

秦先生 三段階ありまして、まず最初に警察官って過労で死ぬ人がすごく多いんですね。

Boosterpackdepot それは先ほどの話を聞いていてよくわかります。

秦先生 その上で、うちの県警でよく言われているのは、「いい人ほど早く死ぬ」でした。ようはいい人なので仕事をたくさん引き受けて、それで結果的に潰されてしまうというケースです。

Boosterpackdepot あー……そうですね。

秦先生 それで、わたしが育休をとった時に、すごくよくしてくださった刑事さんが亡くなったんですね。おこがましい考えかもしれないんですけど、わたしが抜けたぶんの仕事が、その人に降り掛かってしまったんじゃないか、と考えてしまうんです。わたしが子供を産んだことで、あの人を死なせてしまったのではないかと。客観的に考えると本当におこがましい話で、わたし一人がいるかいないかで変わることではないかもしれないけど、とにかく責任を感じてしまって。

Boosterpackdepot なるほど。

秦先生 そんなことを感じながら復帰した時に、広報のような仕事に就いたんですね。いい人がたくさん警察に入ってくれたらいいなと思って広報活動をしていたんですが、そこである、精悍な男子高校生に会ったんです。話を聞くと、「警察官になりたいと思っていたんだけど、親に“あんたみたいな自分のこともちゃんと出来ない人間に、警察官なんて務まるわけがない”って言われたんで諦めました」と言われたんです。

Boosterpackdepot ふむふむ。

秦先生 それを聞いて、「いやー……きみたちが思っているような人よりも、もっとずっとしょうもない人たちが、仕事に振り回されながらやってるんだよ」ということを伝えたいと思ったんです。それを広い世代に伝えたいな、ならマンガだなと思って描き始めました。ただ描いても警察としてこれを発表する許可は出ないだろうし、予算は付かないだろうなとも思いました。

Boosterpackdepot 「しょうもない人たちがやっている」という話だと難しいでしょうね。

泰先生 それで、そういえば昔、先輩が「有名な雑誌で警察官が主役のマンガが人気になれば、警察官の志望者も増えるのにな」と言っていたなと思いだして、それで新人賞に応募しました。

Boosterpackdepot 思いのほか志が高くて驚きました。社会のため、警察のためにマンガを描こうと思ったのですね。

泰先生 いやいやいや(笑)、あの時の高校生にどうやって届くかなと、そういうことしか考えていません。

Boosterpackdepot ただ警察官を辞めてマンガ家になってしまったら、「警察はよくなる」という目的を果たせても、その時に泰先生はもう警察には居ないってことですよね。

泰先生 そうなんですよね。「あ、この方法いいな」と思ったらそれを通すことに集中してしまうので、あとのことはあんまり考えませんでした。

Boosterpackdepot 考えなかった。

泰先生 新人賞に応募したら連載のお声がけをいただき、バッターボックスに立たせてもらえそうだったので、「それなら立とう、フルスイングしよう」ということで退職しました。空振りしたあとだったり、打席のあとのことはあまり……。

Boosterpackdepot え、じゃあこの交番女子の連載が終わったあとのことは?

泰先生 あ、うちの一族はパートのリーダーを多く輩出している名門家系なんです。

Boosterpackdepot え? パート、……ですか。

泰先生 はい。そういう自信が自分にもあって、どんな職種でもパートのリーダーまでにはなれるな、と思っているんです。それなら生きてはいけるだろうなと。警察を辞めたらやりたいと思っていることもたくさんあるので、それをやりながら生きていければと思っています。

★     ★     ★

 どんな質問にも明るくハキハキとお答えいただいた泰先生。同席した担当編集者が「ネームもすごく早く仕上げてくれるんです。ブラックな書類仕事で鍛えられたおかげでしょうか」と言っておりました。

 これからも「しょうもない人たちが仕事に振り回されながらなんとかやっている」警察の仕事、『ハコヅメ 〜交番女子の逆襲』を楽しみにしております!

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